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4 「なんでオレが」
なんという解りやすいタイトル。
色々と想像のし甲斐があるけれど、この台詞は彼の為にあるようなもの。
しかし……厳選なる審査の結果、趣味トークをすることに決定。
彼ではなく、彼で。
「……何の用だ、蘭姐」
「やっと来たのかい。ほら、早くおし」
「いやいや、押すも引くも、何で呼ばれたんだか解んないんだけど」
「樫には洗い張りをしてもらっているからねぇ。暇そうな男を考えたらお前しか居なかったんだよ、カイン」
「樫っていうと……着物関連か」
「年に二度のメンテナンスさ。お前のヤニ臭い手で出来ることと言えば、虫干しくらいだろう? その辺のは特にシミもないし、干すだけで構わないよ」
「ヤニ臭い手で申し訳ありませんでしたっと。その辺にあるのって……まさか、この部屋全部か!? えぇ……どうすんだよ、コレ……」
「おや、神楽に居たことがあるんだろう? 着物の手入れも知らないのかい?」
「着てた訳じゃねーよ……こ、これにかければいいのか? 一着幾らすんだよ、この着物」
「聞かない方がいいんじゃないかい? おやおや、懐かしいねぇ。それは華南の刺繍だよ。割と気に入ってたんだけど、もう表に出ないんじゃ着る機会もなくってねぇ」
「勿体ねーな……着りゃいいじゃねーか。どうせ今の主人たちだって、蘭姐の真似で着てる訳であって、ホントに好きな訳じゃないんだろ?」
「まぁ、客の反応も悪かないしねぇ。出身地のモンが受け入れられているっていうのは、私にとっては嬉しいことさ」
「貢も反物は年中あるしな……この辺の仕立ててないヤツってどうすんの?」
「作りたいヤツが現れたら、作ればいいさ」
「勿っ体ねーな! 要らないなら何本かくれよ、ボーナス」
「馬鹿言うんじゃないよ。それ一本で、何年分のボーナスになると思ってるんだい」
「すいませんでした……蘭姐は、そこで何してんだよ」
「タンスの肥やしを眺めているのさ。やっぱり私は加賀友禅の方が好きだねぇ。加賀五彩、言えるかい?」
「言える訳ねーだろ」
「おや、残念。言えたら反物一本くれてやろうと思ったのに」
「赤青黄白黒!」
「樫にでも聞きな、知識はあって困るものじゃないからねぇ」
「さらば俺のボーナス……」
「カイン。その着物、アンタなら何色の帯を合わせる?」
「俺には解んねーよ! そういう話は樫に聞いてくれ!」
「樫の好みは解っているし、私は基本が出来ているからねぇ。無知による想定外の組み合わせを聞いてみたいのさ」
「……桜の柄があるから、同系統のピンクか赤でいいんじゃなーの」
「愚かな質問と書いて愚問、正に字の如し。想像以上につっっっまんない答えだったねぇ。忌むべきは浅はかな私の方だな」
「そこまで言われるほどダメな回答だったか!?」
「すまなかった。手を、手のみを動かしておくれ。口は噤むといい」
「くっ……今後、蘭姐と着物の話はしないと決めた。今日、俺は決めたからな」
「同感だねぇ。今度は檜にしよう。料理をする者は、色彩感覚に優れているやもしれぬ」
「あぁぁぁぁぁ、腑に落ちねぇぇぇ!!! どうせ正解なんてないんだろ!?」
「正解はなくとも、センスが知れるからねぇ。解った。カインは、うん、解ったよ。もう、十分だ」
「な、何なんだ、この敗北感は……!」
着物と同系色の帯を選ぶのは、全然間違っていない。
蘭姐は面白い組み合わせを聞きたかったのに、普通の回答でがっかりしただけだよ!
普通のセンスだよ、大丈夫だよ!
ちなみに私なら茶系か緑系を選びます。桜の木、そのものの配色。
もうちょっと趣味トークしたかったけど、この辺で。十分長いけど。